まとまった形で取り上げられることのなかった、アメリカ独立期をめぐるホーソーン作品の総合的研究のための基礎的準備を心がけた。 (1) 全集、短編集に未収録の文献の内、国内で収集可能なものを他大学やウェッブ上で入手し整備した。 (2) 夏期休暇にカナダ国境近くのメイン州に現地調査も兼ねて出かけ、国内では入手困難な文献・資料を収集した。アメリカの広義の独立戦争におけるフランス側、イギリス側の資料、現地の地理的状況などを把握した。特にホーソーンが「ある鐘の伝記」のソースとした「ラール神父の鐘」を実際に目で確認し、その歴史上の記録にも接することができた。この結果を進行中の共編著『独立の時代-アメリカ古典文学は語る』の、「ある鐘の伝記を読む」に反映させた。 (3) フレンチ・インディアン戦争を背景にしたホーソーンの短編を分析する過程で、英米の軍人についての歴史的背景を調査した。その成果はヴィクトリア朝文化研究学会から依頼された特別研究発表「ホーソーンの<みた>二つのイングランド」と、アメリカ学会から依頼された『アメリカ研究』の特集「大統領」での「ホーソーンの<ジョージ・ワシントン>に反映させた。 (4)戦争をめぐる研究として、関大英文学会で企画したシンポジウム『英米文学と戦争』を実施し、司会・講師をつとめた。この成果を共著の形で発表する計画をたてている。 (5) 春期休暇にイングランドで図像資料を収集した。その成果は進行中の山下昇氏編の共著論文「ホーソーンの<みた>二つのイングランド--蔦をめぐる瞑想」に反映させた。
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