平成21年度における研究の主要な目的は中国系作家Amy TanとFae Myenne Ngの作品にみる共同体と環境的想像力についての考察である。研究成果は雑誌論文一本、学会発表一回である。 1.研究成果:〔雑誌論文〕「場所の表象としてのチャイナタウン-The Joy Luck Clubにおける物語空間」(『松山大学論集』第22巻1号、5月末発行予定)、〔学会発表〕「中国系アメリカ文学における「チャイナタウン」の場所の表象」(中・四国アメリカ学会第37回年次大会、於:安田女子大学) 2.内容・意義・重要度:〔雑誌論文〕「場所の表象としてのチャイナタウン-The Joy Luck Clubにおける物語空間」において、中・四国アメリカ学会での発表原稿をもとに、Amy TanのThe Joy Luck Clubのチャイナタウンが、歴史的時間を抑圧した、母親と娘の「血」の絆の重要性を際だたせる物語空間とどのように関連した場所の表象であるかを考察した。〔学会発表〕「中国系アメリカ文学における「チャイナタウン」の場所の表象」では、中国系アメリカ文学の背景となるチャイナタウンが、中国系の文化と西洋的オリエンタリズムの葛藤と調整によって構築される文化表象であることを、Amy TanのThe Joy Luck ClubとFae Myenne NgのBoneにおいて考察し、場所の表象としてのチャイナタウンの文学的多義性を展開した。 平成22年度においては、以上の研究成果を踏まえ、特に都市空間における多民族的な環境的想像力について考察し、これまでの3ヵ年の研究を総括しつつ今後の研究の方向性を展望する予定である。
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