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平成20年度は、特に資料調査に重点を置き、長期休業期等を利用して、研究対象コーパスの大半を占める「詩学講義」草稿資料(1933年から1937年の準備草稿一巻NAF19086および1937年から1944年の講義草稿資料全十八巻NAF19087-19104の合計十九巻)が所蔵されているフランス国立図書館に赴くことができた。まずマイクロフィルムで各巻の全体に眼を通し、さしあたり重要と思われる部分を筆写していく、という段取りで作業を続けた。膨大な資料をすべて筆写することは不可能なので、実際的には、特に、古典、ボー、ボードレール、マラルメ、象徴主義など、いくつかの具体的な着眼項目を用意して、それらをめぐるヴァレリーのノートを部分的に筆写するべく努めた。結果として、「詩学講義」草稿資料全十八巻のうち第六巻までのマイクロフィルムにひと通り眼を通し、第一巻NAF19087に収録されている各年度のプログラムと講義要旨を完全筆写したほか、特筆すべき成果として、第五巻NAF19091(マイクロフィルム番号MF3366)に収録されている、ボーについての講義録の一部、レオナルド・ダ・ヴィンチについての二週連続の講義速記録、「精神の作品の生産についての教育の試み」についての講義速記録(いずれもほぼ完全なタイプ原稿)をすべて筆写することができた。初年度に研究対象コーパスの十八分の六(準備巻を含めると十九分の七)まで、調査を進めることができたのは、順調な成果であると考える。今後は、これまでの読み取り上の疑問点を明らかにしながら、残りの巻についての調査を、同じように進めていきたい。
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