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2010 年度 実績報告書

北ヨーロッパにおける〈愛〉の寓意の変容と衰退―中世末から近世へ―

研究課題

研究課題/領域番号 20520282
研究機関名古屋大学

研究代表者

前野 みち子  名古屋大学, 大学院・国際言語文化研究科, 教授 (40157152)

キーワード<愛>の寓意 / ルクスリア / 奢侈文化 / エンブレム / キリスト教モラル / 七つの大罪
研究概要

平成21年度にとりくんだ、愛を司る異教神、ウェヌスとアモルの中世的変容についての考察は、研究計画の当初推測していた経路から外れる形で進展した。それを受けて、22年度の研究では、中世の擬人化アレゴリー文学に大きな影響を与えたとされる古代末期の護教文学『プシコマキア』が、その<七つの大罪>のモチーフによって、一般人の生活の細部を律する宗教的モラルに変容したこと、その一つ、語源的には奢侈を意味する<ルクスリア>にプルデンティウスが込めた「放恣」や「無節操」は、次第にエロス的<恋愛>の意味合いを強め、すでに十三世紀後半において、一義的に「色欲」を表すに至るという現象を辿った。具体的には次のような作業と分析を行った。
(1) 教会建築レリーフや写本など多くの図像資料を分析した結果、<ルクスリア>が中世においてすでに<リビドー>と混同される傾向を見せ始めていることが明らかになった。
(2) 13世紀半ば過ぎに書かれたノヴァル『人生の四段階』でも、繰り返し戒められるリュクシュールはすべて「色欲」を意味し、富裕層と関連づけられて語られることを確認した。
(3) 13世紀後半(末?)の代表的アレゴリー文学『薔薇物語』後篇にも、ウェヌス・アモルと奢侈文化・娼婦文化(直接<ルクスリア>に言及されるわけではない)の関係が高尚な理念を裏切る現実として描きこまれていることを、テクストのなかに確認した。
(4) 公娼館を構造化し繁栄させていった十四・五世紀の商業都市社会において、市民的生活実態と乖離する<ルクスリア>のモラルが、ヴァニタスやメメントモリの教えと図像的に結びついていく過程に注目し、その意味を分析中である。
以上の分析結果を、近いうちに二本程度の論文にまとめる予定である。

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公開日: 2012-07-19  

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