主として中世末から十七世紀末に至る北ヨーロッパを対象として、〈愛〉の寓意とその表現形式がどのように変容したのかという問題を、その社会背景と絡めて、以下の三段階に分けて考察する。 (1)中世末の北ヨーロッパ都市文学における〈愛〉の寓意のトポス及びステレオタイプ表現の目録作成、及びそのルーツからの変容過程の分析。 (2)中世末から十六世紀半ば過ぎまでの都市文学や出版物に登場する〈愛〉の寓意の分析。 (3)十七世紀オランダで数多く出版された 〈愛〉の寓意図像集の特色とその社会背景の記述。カトリック圏ヨーロッパの寓意図増収との比較・分析。 この三段階的研究の-貫性と求心性を保つために、以下の四つの観点を常に念頭に置いて考察を進める。 (1)〈愛〉をめぐる寓意的言説及びイメージの焦点として、ウェヌスとアモル(エロス)のイメージとその変容・変貌に注目する。 (2)十七世紀末まで〈愛〉をめぐる寓意的言説の規範であったオウィディウスの原典とその模倣・引用・短編か・改編、そして図像イメージへの転化に注目する。 (3)〈愛〉をめぐる寓意のトポスとステレオタイプの典型といえる身体各部位の独立・断片化・列挙、心と身体の分離・乖離、などについてのテクストと図像に注目する。 (4)都市民と宮廷人、都市民と知識人、新教と旧教、北ヨーロッパと南ヨーロッパの対概念を分析の際の重要な要とする。
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