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2010 年度 実績報告書

古代ギリシアにおけるカロス・タナトスの研究

研究課題

研究課題/領域番号 20520284
研究機関名古屋大学

研究代表者

吉武 純夫  名古屋大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (70254729)

キーワードカロス / タナトス / ギリシア悲劇 / テュルタイオス / ホメロス
研究概要

平成22年度も、古代ギリシアのカロス・タナトスという概念を説き明かす本の完成を目指して研究が進んだ。アルカイック時代までは戦中死という意味しか表さなかったこの言葉が、古典期にはカロスという意味の多様性に触発されて、戦死以外の様々な形の死にも適用されるという典型例を、二つのギリシア悲劇の中に探った。まず、ソポクレス『アイアス』は、侮辱を受けた英雄がそれをそれを唾棄するべくスペクタクル性の高い自刃をすることがカロス(賛嘆に値する)であると思わせながらも、その死によって彼が家族を災いの中に捨て去るという死にかたは、貴人にとってカロスなる(相応しい)ものとは言えないということを示唆している。この論考は名古屋大学文学部紀要に発表された。
いっぽう、エウリピデス『オレステス』では、死刑を宣告された主人公が、最悪の場合でもカロスな死は確実に得られるという見込みをもってヘレネ誅殺に勇み立つ。そのカロスな死とは最初は、「義憤を晴らすことがかなわないという状態を唾棄する」という形で潔く命を捨てるという英雄的な死を意味しているが、計略が進んでいくうちに、それは「貴族の名を汚さない自決」でしかないものとなる。この論考は2011年4月に京都大学で発表することになっている。また、戦死を称賛した葬礼演説のイデオロギーについての私の論考を、古典期アテナイの戦争と社会を集めた英書(War, Culture and Democracy in Classical Athens)に載せた。アテナイの現実社会において称えられる戦死は、テュルタイオスが称えたような果敢な死である必要はなかったという趣旨である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011 2010

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] エー・カロース・テツネーケナイ:Aiasの悲劇的課題2011

    • 著者名/発表者名
      吉武純夫
    • 雑誌名

      名古屋大学文学部研究論集(文学)

      巻: 57 ページ: 27-45

  • [学会発表] オレステスたちの目算とカロン2011

    • 著者名/発表者名
      吉武純夫
    • 学会等名
      京都大学西洋古典研究会(発表確定)
    • 発表場所
      京都大学文学研究科
    • 年月日
      2011-04-23
  • [図書] War, Democracy and Culture in Classical Athens2010

    • 著者名/発表者名
      D.M.Pritchard
    • 総ページ数
      359-77
    • 出版者
      Cambridge University Press

URL: 

公開日: 2012-07-19  

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