本研究は、西洋古代世界における固定的な他者差別や他者排除からの脱却化指向にともない必然的に生じてくるより高次元の他者との共存の観念と共生の意識に着目し、そうした新たな人間観・社会観・自然観の形成と発達のプロセス、そして問題点などの実相について、ギリシアとローマの両古典文学のジャンル横断的な分析と考察によって明らかにすることを目的とする。具体的には、(1)叙事詩文学を対象として、個人および共同体の諸関係における自由と共生の観念の変遷を跡づける。(2)他者としての自然との共生の観念と意識について、教訓詩文学を対象として分析する。(3)悲劇・喜劇において、社会的関係における優位・劣位の他者との共生のテーマを考察する。(4)思想家・宗教家における人間の自由と人類共生に関する言説を比較検討する。(5)歴史書や地理学書に見られる異民族・異宗教との共存・共生の事例について検証する。
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