研究概要 |
本年度は,研究対象となる資料体の構築が作業の中心となった。勤務校の本務とのスケジュールを調整した結果,関連する文献を渉猟する作業にまず着手し,予定していた草稿の現地調査のほうは平成20年11月に行った。フランスに渡航し,グルノーブル市立図書館に所蔵されている未定稿『ミーナ・ド・ヴァンゲル』と『薔薇色と緑』の自筆草稿の現物をまず閲覧したが,滞在期聞が限られていたため同地ではテクストの精読ならびに分析する時間的な余裕がなく,グルノーブル市立図書館に草稿のマイクロフィルムをPDFデータ化する依頼をだし,帰国後,年度末近くになってそのデータをようやく入手することができた。当初の予定よりも作業の進捗状況に遅れはあるものの想定の範囲内である。したがって本年度は草稿解析の代わりに,『ミーナ・ド・ヴァンゲル』のテクスト分析の準備作業として,その女主人公の原型となったと考えられる,『赤と黒』『ヴァニナ・ヴァニニ』のそれぞれのヒロイン像の成立過程に関する考察をおこない,平成21年3月末にパリで開催されたスタンダール研究の国際シンポジウムにおいてその成果を口頭発表した。
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