研究概要 |
1.本年度は研究に先立って原書の保存に努める。本学図書館所蔵の『ゲオーポニカ』はNiclas版(Lipsiae, 1781年)であり、4冊本(cviii+1274頁)で、サイズは22cm×13cmである。その内訳は次の通り。 1冊目:序言(1-6頁),I-III巻(7-262頁) 2冊目:IV-VII巻(265-562頁) 3冊目:IX-XII巻(565-928頁) 4冊目:XIII-XX(931-1274頁) 1275頁以降に複数のIndex, AddendaおよびEmendandaを有す。総ページ数は1500頁程度。 本年度で電子化の作業はすべて終了した。 2.これと並行して、本書の翻訳・注釈の仕事を開始した。全20巻のうち農事暦に関する第3巻の翻訳・注釈の作業が終了し、公刊することができた。第2巻の翻訳・注釈の作業はなお進行中である。わが国初の翻訳および注釈の試みであり、この成果は貴重である。また、『ゲオーポニカ』2・3巻、古典文献及び碑文史料を用いた古代ギリシアの農業に関する研究を開始し、「古典期ギリシアの農業」という論文として纏めることができた。わが国における古代ギリシア農業史に関する研究はやや遅れているので、この研究がその出発点として極めて重要な意義を持つことになろう。 3.また本年度は資料収集の目的で京都大学に出張した。この調査でBeckh版(Lipsiae, 1895)を実見し、複写することができた。これによって、本学図書館所蔵のNiclas版(Lipsiae, 1781)との比較研究が可能となった。資料収集の目的で予定していた一橋大学社会科学古典センターへの出張は同センター耐震改修工事のためサービスが停止しており実現しなかった。『ゲオーポニカ』のラテン語版が所蔵されているので、いずれ出張の機会を設けたい。
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