第二年度である本年度は、初年度に引き続いて本研究に関連する先行諸研究の調査と概観、ならびに「創造的模倣」など文学創作の手法や原理に関わる古代修辞学および文芸論上の諸著作の概観を継続して行い、間テクスト解釈理論を始めとする現代の文芸理論との関連についても確認した。これと並行して、模倣と独創の様相が最も顕著に現れる修辞技法と文体論的諸特徴に関しても先行研究の成果に基づき、ギリシア・ローマ文学の各種文芸ジャンルとの関連に着目しつつ引き続き検討した。次いで「創造的模倣」の実例として検討すべき作品の選定を行った。本研究組織を構成する両名は首都大学東京において担当する「ギリシア語韻文演習」と「ラテン語韻文演習」の授業を連携させ、相互に関連する韻文作品を選定して講読するという試みを続けているので、本年度はその演習授業の題材として、カッリマコスの讃歌とオゥィディゥス『変身物語』の一部、ヘーシオドスの『仕事と日』とウェルギリウスの『農耕詩』、テオグニスのエレゲイアおよびバッキュリデースの抒情詩とホラーティウス『カルミナ』など、ジャンルの相違を超えた関連を持つ作品同士をも選定して読み比べた。その際には、まずは文献学的基礎作業として写本伝承史および本文校訂論の分野での諸研究を調査した上で、当該テクストに関する可能な限り綿密・着実な読解を行い、形式と内容の両面にわたる多様な観点からの観察と分析を進めた。こうした作業と並行して研究代表者・分担者ごとに各自の研究を進め、中間的な成果となる論文として、次ページに示したように都合3点の論文を公刊した。年度末には初年度の研究を反省し、最終年度に向けた研究全体の方向性を確認した。
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