本研究の目的は、20世紀前半のフランス文学において、言語実験的作品を書いた作家たちのうち何人かを取り上げて、その背景、特質、射程を検討することであった。具体的にはレーモン・ルーセル、ゲラシム・ルカ、ジョルジュ・ペレックの三人を取り上げた。初年度においては、秋に一度、フランスへの研究出張を行い、資料収集に努めた。特にゲラシム・ルカに関連して、ルーマニア・シュルレアリスム関係の古雑誌などのコピーを手に入れた。またその際、特異な文体で知られる現代フランスの作家フランソワ・ボン氏と面会し、インタビューを行った。ジョルジュ・ペレックの資料が所蔵されるアルスナル図書館を紹介していただいたのもボン氏である。第2年度は、ルーセル、ゲラシム・ルカに関する論文をそれぞれ一本ずっ執筆した。この2本の論考は、1年遅れで翌年せりか書房より『ドゥルーズ千の文学』(宇野邦一・堀千品・芳川泰久編著、2011年1月発行)の中の分担執筆分として刊行された。また夏に一度、フランスへの研究出張を行った。その際、フランスにおける若手のペレック研究の第一人者であるソルボンヌ大学教授のクリステル・レッジアー二氏と面会し、関連文献をコピーさせていただくなどした。最終年度には、「レーモン・ルーセル:言葉と物」のタイトルで学会ワークショップを開催したほか、シュルレアリスムの詩人ポール・エリュアールやレーモン・ラディゲらの翻訳をした日本のモダニズム詩人北園克衛を軸に、日仏の言語実験詩人の比較研究にも手をつけた。
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