本年度の目標は、1)ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル研究に一定の見通しをつけて論文の準備・執筆に取り掛かること、2)ジョルジュ・バタイユについて(特に、2月6日事件と深い関係にある小説『空の青み』について)短い論考を執筆することの二つであった。 まず「2月6日事件とドリュ・ラ・ロシェル」については、シュルレアリスム関連のテクスト等にみられるアンガージュマン批判を念頭に置き、事件を契機とする作家自身のアンガージュマンを再考する論文の執筆を始めた。ただし平成24年4月には、ドリュの文学作品をまとめたプレイヤッド版の出版が予告されているため、当論文の執筆は一時的に中断している。プレイヤッド版に収録される新資料を踏まえ、分析を深化、ないし刷新させる必要が生じるはずだからである。 バタイユについても、今年度論文を発表することはできなかった(ただし、昨年度の「研究発表」の欄に記載したバタイユ論《L'Introduction du Bleu du ciel》は、掲載誌の都合で大幅な修正を余儀なくされ、平成23年10月になってようやく発表の運びとなった)が、30年代の政治不安を色濃く反映した同時代の文学作品(マルローの『人間の条件』やセリーヌの『夜の果てへの旅』、また『空の青み』執筆当時、バタイユがそう言及しないまでも強く意識していたと思われるアンドレ・ブルトンの『通底器』)や、バタイユ自身の手になる他の文学作品(特に『眼球譚』、『ジュリー』、『不可能なもの』)との関係性のなかで『空の青み』を読み直す作業を進めた。作家の死後50周年にあたる平成24年度中に、その成果の一端を発表したい。
|