研究課題
2009年度は計画通り、前年度に収集した文献に基づき、3本の研究論文を発表し、7月にはフンボルト大学で開催された学会にて、本テーマの口頭発表を行った。7月、8月および3月のドイツ滞在中は亡命者Karl Lowith, Kurt Bauchwitzらをめぐる文献資料を収集し、特に、Marbachでは、日本滞在中にKarl Lowithが記した未公開の日記の調査をした。2008年度から続行しているアジア歴史資料センター(JACAR)保管の公開資料"ユダヤ人問題外交文書"の調査研究も進展し、14巻(5000ページ)の文書のリスト作成(日本語)が完了した。現在は、必要箇所の独語版資料作成の作業を開始し、文献研究を進めている。さらに、今年度は6度の研究会を行い、歴史学的文献や亡命者が記した文章を読み、亡命体験に関する記述が国や文化によってどう異なるか、日本・アジアの視点ではどう記述されているか、異文化記述についての議論・意見交換を重ねた。また、研究会では、2010年9月に開催予定のシンポジウムの詳細を計画し、約20名の参加者の決定、セッションや発表内容の確認を行った。シンポジウムでは、これまでの研究会での議論を踏まえ、ドイツから亡命研究の第一人者Wolfgang Benz氏、上海からは、上海への亡命研究者Astrid Freyeisen氏ら数名の代表的研究者を招聘し、議論することを計画している。なお、シンポジウムはGoethe Institut TokyoおよびDAAD(ドイツ学術交流会)と協力して開催することになり、各責任者との協議を続けている。また、シンポジウム参加の呼びかけをHPでも行い、日本へ亡命をした音楽家の研究者である早崎えりな氏らが新たに研究会に加わるなど、学際的な研究会、シンポジウムとなってきている。本研究の目的は、亡命者文学・移民文学を旅行文学と捉えることにより、ナチス・ドイツ政権下での亡命者を出した側、受け入れた側であるドイツ、アメリカ両国での移民文学の研究視点とは異なった、日本、あるいはアジアの視点からの切り口を見出すことであるが、研究の継続およびシンポジウム開催により、より多角的に問題提起をし、議論の場を設けることができると考えている。
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http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20012491/index.html