1.本年度の研究目的=フランス中世の文化をフランス現代思想の担い手たち、とりわけジョルジュ・バタイユ(1897-1962)とミシェル・フーコー(1926-1984)の関連テクストに拠りながら捉え直すことを研究目的とした。なかでも今年度はバタイユのテクストと彼の言及する中世文化の諸相について考察を行い、論文にまとめることに向かった。 2.研究の実施=具体的にはバタイユのパリ古文書学校の卒業論文『騎士の位階』およびその後のテクスト「中世フランス文学、騎士道道徳と情念」、『ジル・ド・レ訴訟録』「序文」で扱われた中世騎士道文化について、さらに彼の言及する中世の詩について考察を深めた。そして夏の休暇および年度末の3月にそれぞれ10日間ほどフランスに渡り、関連資料の収集に努めた。またこれらのフランス出張の際にはノルマンディー地方の中世ロマネスク教会を訪れ、建築および装飾彫刻に関して実地調査を試み、貴重な発見を多数得ることができた。 3.研究の成果=上記のように実施された研究は次のような成果に結実した。 (1)論文制作としては法政大学紀要『言語と文化』第6号(2009年1月発行)に「ジョルジュ・バタイユと中世の言語」を発表した。(2)著作としては、書き下ろし論文および上記の論文を含む論文集『バタイユ』(青土社、2009年3月)を刊行した。(3)また朝日カルチャーセンターの教養講座『西欧芸術と思想』で「バタイユと中世」と題する講義を2008年11月から2009年1月にかけておこない、研究の成果を一般の社会人に口頭で公開し、もって本研究の社会的貢献とした。
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