1.本年度の研究目的=昨年度から引き続きフランス中世の文化をフランス現代思想の担い手たち、とりわけジョルジュ・バタイユ(1897-1962)とミシェル・フーコー(1926-1984)の関連テクストに拠りながら捉え直すことを目的とした。今年度はまずバタイユからフーコーへ思想が継承されたことを近代的理性への根源的な批判意識という点に絞って省察し、論文にまとめた。続いてバタイユの脱近代的な中世文化理解を雑誌『ドキュマン』所収の初期の論文「サン・スヴェールの黙示録」(1929年)に注目して考察した。2.研究の実施=具体的には、前者のバタイユからフーコーへの思想の継承については法政大学の通信教育用テクスト『社会思想史』の第5章にまとめた。近代性を再度強める第2次世界大戦後の哲学教育と一般の思潮に反発して若きフーコーが先人バタイユの思想を発見していく経緯を論じた。後者のバタイユの中世観に関しては、フランスの研究組織「中世の現代性」によってスイスのローザンヌ大学で開催された第6回国際シンポジウム「学者と文学」において口頭発表を行った。その題名は、Le sens de l'erudition chez Georges Bataille-autour de son interpretation de l'Apocalypse de Saint-Severである。内容としては、バタイユが文献資料中心の当時の近代的中世研究に抗って、文字になりえない中世人の情動の美学を掘り起こそうとした試みを精査した。3.研究の成果=活字となった成果としては、(1)「フランス現代思想-バタイユからフーコーへ」(『社会思想史』法政大学通信教育テクスト、第5章)、(2)上記のスイスでの学会発表を日本語に訳し、加筆改稿した論文「『サン・スヴェールの黙示録』とジョルジュ・バタイユ-非-知の哲学者における中世研究の意義について」(法政大学紀要『言語と文化』第8号、2011年1月)があげられる。なお仏語文による口頭発表は上記シンポジウムの論文集に収録される予定である。
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