研究発表 1. 中世ドイツの文学的・言語的展開 ドイツ語の最初期から中世盛期に至る言語的変遷・文学的特徴を残された言語資料に即してたどり、迂言表現と縮約形など、中高ドイツ語期(1150頃〜1350頃)の押韻技法を多面的に示した。さらに、当年7月に行われるシンポジウムを前に、『ニーベルンゲンの歌』と『クードルーン』の類似点と相違点について概要を述べた。 2. 『クードルーン』におけるいわゆる「ニーベルンゲン詩節」について 『クードルーン』には全1705詩節中『ニーベルンゲンの歌』と全く同じ構成の詩節が100詩節見られるのであるが、これらを詳細に検討し、両作品の内容的類似点と相違点を詩節構成上から明らかに示した。このような視点からの両作品の比較は初めての試みであり、両作品の本質的相違を浮き彫りにできたと自負している。 論文 1. 名詞の迂言表現-押韻技法の観点からlipの場合- lipについて、押韻技法の観点から古高ドイツ語最初の本格的な脚韻文学であるオトフリートの『総合福音書』から中高ドイツ語の五つの主要叙事作品における全用例を分析・分類し、それぞれの作品に見られる押韻のありかた、lip自体には意味のない迂言用法を比較的に明示した。この研論文によって本研究の目的である「中高ドイツ語叙事作品に見られる押韻技法の解明」が一歩進められたと思っている。
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