研究概要 |
A.ボイムラーとトーマス・マンとの間の影響関係についての資料である、M.Baeumler/H.Bruntrager/H.Kurzke:Thomas Mann und Alfred Baeumler,Wurzburg(Konigshausen)1989.と、上田安敏『神話と科学』(岩波書店、1984年)を読了し、その結果、二人の論争の発火点となったバッハオーヴェンの『母権制』を通読しておくことが研究の前提として不可欠であることを実感し、現在『母権制』を読み進めている。それにより、ケレーニィの指摘通り、バッハオーフェンの女性理解が非常に細やかで、客観的であることが確認され、逆にA.ボイムラーの『母権制』理解にそうしたフェミニズム的要素が一切、欠如している点に、A.ボイムラーとマンとの思想的基盤の違いが読み取れることが判明した。また、それと関連して12月20日〜29日にドイツへの調査旅行を行った。ハンブルク、リューベックおよびミュンヘンで、図書館、考古学博物館、民族博物館の資料検索と閲覧を行い、「ゲルマン性」および「民族性」に関連する展示物を直接目で見ることによって、それらについての具体的なイメージを得たところである。この作業を通じて、A.ボイムラーに特徴的な「神話」観念についての理解を深めることができた。また、トーマス・マンの考える「ドイツ性」と「神話」についても、フーズムの北海博物館とリューベックの図書館およびブッデンブロークハウスで資料の閲覧検索を行い、同様の成果を得た。 今後引き続き『母権制』を読み続けていくことにより、その研究成果を平成21年度に、学会発表および学術論文の形で公表する予定である。
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