本年度、インド叙事詩『マハーバーラタ』の比較神話学研究への進展をめざす本研究では、『マハーバーラタ』の神話の個別研究、比較研究を引き続き行なった。 平成23年9月、日本印度学仏教学会・第六十二回学術大会(於龍谷大学)に出席し、『マハーバーラタ』やその他のインド文学、説話、神話について最新の研究成果を多く知ることができた。また、ヴェーダの文献学的研究、言語学的研究のいくつかに大きく啓発されるところがあった。 また、『マハーバーラタ』第13巻第1章の説話「蛇に噛まれて死んだ子供をめぐる対話」の和訳研究について作業を行い、本年度に公刊した。既刊の同話の説話研究と一対の研究である。蛇に噛まれて死んだ子供の死の責任をめぐって、子供の母親、猟師、蛇、死神、「時間」(「運命」)の間で問答が交わされるという説話についての考察である。 引き続き、『マハーバーラタ』第13巻第50章-第51章の説話「チャヴァナ仙と魚たち」の和訳研究について作業を行っているところである。これについてもまもなく脱稿・投稿し、来年度に公刊する予定である。既刊の同話の説話研究と一対の研究である。棒杭のようになって水中に魚たちとともに暮らす苦行を行なう仙人チャヴァナの説話を考察したものである。
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