平成20年度の主たる研究実績は、以下の4点である。(1)シーブーラパー関連資料の収集とデータベース化については、タイ語月刊文芸誌『本の世界』(1974創刊〜1982廃刊)、同『本の道』(1983創刊〜1985廃刊)、同『Writer Magazine』(1986創刊〜2006廃刊)のシーブーラパー関連評論をすべて目録化した。解題も終えたので、21年度は重要論攷を翻訳予定。その他、生誕100年記念で発行された未刊行作品、評伝、CDなども収集できた。また、中国語に翻訳された中編『絵の裏』などの資料、北京で没後に行われた中国政府による公的追悼会関連の資料も入手できた。(2)タイ作家協会事務局を兼ねる「シーブーラパーの館」でシーブーラパーの蔵書、書簡、写真、新聞切り抜き、投獄中のスケッチやメモなどのコピー、撮影、目録作成を実施した。この活動のために8月と2月に訪タイする必要があったが、十分に成果があった。特に、蔵書目録やメモを研究する中で、シーブーラパーに影響を与えた西洋の人道主義思想と後記の社会主義思想の源泉となる哲学者、思想家が一定程度特定できた。(3)シーブーラパーの遺族(90歳の未亡人、62歳の長男、60歳の長男夫人=タイの政治家プリディー・パノムヨン長女)などから家族揃っての中国亡命時代の記録を収集し、現在も北京に滞在中のシーブーラパーの元同志の動静も聞くことができた。(4)シーブーラパーの思想的転換期の重要作品『また会う暇で』、『罪との闘い』、労働者や農民を主人公とする短編集『もっと力を』を邦訳し、財団法人大同生命国際文化基金から刊行した
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