平成20年度は、「対抗産業革命」の理論形成の分析を進める一方で、日本におけるバーナード・リーチの活動と民藝運動の展開を跡づける研究を行った。 「対抗産業革命」に関しては、その淵源としてイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動を措定し、そこからリーチと柳宗悦らの思想と活動を考えた。19世紀後半から20世紀にかけて活動したアーツ・アンド・クラフツ運動の工芸家達と、20世紀のリーチ(及びリーチ製陶所)は共に博物館において歴史として語られる段階に入っている。これらの歴史を21世紀において如何に語るかに関しては、イギリスでも日本でも視座が必ずしも定まっていないように見受けられるが、「対抗産業革命」はそうした視座の候補になりうると思われる。ただし、「対抗産業革命」という共通概念を用いて20世紀のイギリスと日本の工芸を論じると、逆に両者の間の差異が顕わになることも判ってきた。10月下旬に大阪で行われた第6回デザイン史デザイン学国際会議にて、民藝運動を研究する際に「対抗産業革命」という視座を用いることに関し、英語で研究発表を行った。 一方、リーチの生涯と芸術、および民藝運動に関する基礎研究として、沖縄、鳥取、倉敷で調査を行った。倉敷の大原美術館では、同館の協力を得て、作品調査を行った。また、沖縄県の那覇市や竹富島における調査では、民藝運動がもっていた思想性を改めて確認することができた。
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