研究概要 |
今年度は、清平山堂の刊本について、以下の版本調査を行った。 1. 中国国家図書館所蔵の清平山堂刊行小説残本二篇(阿英発見本) 昨年度はマイクロフィルムによる調査を行ったが、今回の調査では原本の調査が許可され、紙質、版匡の大きさ等を確認した。一部のページについでは、書影の電子データを取得した。従来、この残本については版心に清平山堂と刻されていないことなどから、清平山堂の刊行を疑う向きもあったが、調査の結果、版式等から清平山堂の刊行であることは、ほぼ確実だと思われる。 2. 北京大学図書館所蔵の『雨窗欹枕集』 原本の調査を実施し、紙質、版匡の大きさ等を確認した。部分的に版本の撮影も行った。国立公文書館(内閣文庫)所蔵の『清平山堂話本』十五種とは、紙質にかなりの違いが感じられるものの、版式等はおおむね一致する。また、関連する問題について、中国の学会で以下の報告を行い、海外の専門家と意見・情報の交換を行った。 3. 中里見敬「日本九州大学濱一衛文庫所蔵戯劇資料簡介」(第八届中国古代小説戯曲文献与数字化研討会,中国・首都師範大学,2009年8月17日) 今年度の調査により、清平山堂刊本の小説に関してはすべて原本を実見することができた。来年度は清平山堂の小説以外の刊本も含めて、家刻本としての清平山堂刊本の特徴をさぐっていく予定である。また、清平山堂以外の様々な刊本・抄本等にも視野を広げて、清平山堂刊本の位置づけを考えていきたい。
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