本研究は、日本の学術・文化の形成を、中国の学術・文化、特に漢籍の受容と、その日本における変容、展開という面から捉えようとするものである。具体的には、奈良末・平安初期の興福寺僧善珠が撰述した仏典注釈書を研究対象の中心として、その漢籍引用部分を整理し、そこに存する佚文を輯集するとともに、日本、そして東アジアに共有された漢字漢文文化の特質と本質を明らかにするための新たな手がかりを築くことを目指している。具体的には、以下の4点を柱とする。 (1)善珠撰『成唯識論述記序釈』及び『因明論疏明灯抄』の伝存諸本を調査し、本文を校訂、整理する。 (2)善珠撰述書から抽出した漢籍引用文のうち、特に佚文、異文部分を明らかにし、問題と意義を整理する。 (3)善珠撰述書における漢籍の引用文を「資料集成」としてまとめ公開する。 (4)整理した資料をデータベース化する。
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