本研究は平成20年度から22年度までの3年間、本科学研究費補助金の助成を受けた。代表者および分担者は、90年代より台湾原住民文学の翻訳・研究に従事し、原住民族作家への聞き取り調査、作品舞台でのフィールドワークを行い、創造される作品世界の背景への理解を深めてきた。さらに、研究協力者として、原住民族作家や原住民族雑誌の編集者に参加してもらい、いっそう大きな成果をあげることができた。このような研究方法を実現できているのは本研究が唯一であり、日台の学術交流の上からもその意義は甚だ大きいものがある。以下、本研究であげた研究成果を列記する。 1、平成14年11月より刊行している『台湾原住民文学選』全9巻(草風館)の出版を完成した。本研究実施内の出版は次の通りである。下村作次郎編『晴乞い祭り散文・短編小説集六』(2008年6月)、魚住悦子・下村作次郎編訳『海人・猟人シャマン・ラポガン集/アオヴィニ・カドゥスガヌ集七』(2009年4月)。なお、『台湾原住民文学選』全9巻の出版は、台湾の学界での評価が極めて高く、行政院文化建設委員会より国家台湾文学館にその業務が引き継がれた出版助成において、下村は孫大川著『台湾原住民族文化文学論』、魚住はバタイ『笛觀』『馬鐵路』の翻訳権を得ている。 2、学会、および国際シンポジウム、ワークショップにおいて研究成果を発表した。下村は2010年に中興大学、台湾大学、清華大学、魚住は中国文化大学、台湾大学を会場にした学会でそれぞれ講演や研究発表を行った。 3、日本台湾学会第11回学術大会(2009年6月6日、於日本大学)で企画されたシンポジウム「台湾原住民族にとっての霧社事件」に参加して、霧社事件関係者のタクン・ワリス氏の招聘に協力し、論文の翻訳、学会当日のパネリスト報告や通訳を行った。 4、その他、本研究実施内に論文や記事を多数発表した。
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