前年度に引き続き、杭州詩人集団で活躍した詩人たちの著作、地方志、同時代の関係文献を調べ、各地を移動した杭州詩人たちの文学活動を調べた。前年度に検討を行った揚州の『韓江雅集』が、いかに杭州と深くかかわるものかについて、清代の詩文集を収めたデータベースCDROMを購入し、関連事項を調査した。また、各図書館に赴き、直接文献にあたって調査を行った。これにより、『韓江雅集』が、杭州詩人を多く含むのみならず、杭州での新しい詩社の設立に深く関わっていたことを明らかにした。また揚州詩社での唱和詩の内容が、浙派と称される、杭州を中心に盛んになる詩風と共通すること、それがパトロンとなった蔵書家の蔵書と関わることを明らかにした。その成果については、中国中世文学会平成22年度研究大会で発表を行った。 また、平成20年に研究発表を行った全祖望について、更に文献やデータベースを用いて調査を進め、個人としての作詩よりも唱和の作が多かった全祖望について、その方針が杭州詩壇の詩人との交わりの中で培われたものであること、また唱和詩に関する様様な活動、つまり詩社の設立や唱和集の編纂が杭州詩人〓鶚の影響であることを論じた。更に史実を補うための唱和詩というスタイルが、各地のパトロンたる蔵書家の力を借りて成立しえたこと論じた。 なお、全祖望と杭州詩壇に関する研究成果の一部は、『福山平成大学経営学部紀要』第7号に「全祖望と唱和詩-杭州詩壇との関わりを中心に-」として発表した。
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