研究概要 |
代表者小川は分担者石井と協力して、唐朝の音楽論「楽府雑録」の注釈書「Das Yueh-fu Tsa-lu des Tuan An-chieh Studien zur Geschichte von Musik,Schauspiel und Tanz in der T'ang-Dynastie」(von Martin Gimm著)の内容を引き続き検討した。その中から二十八調の条の和訳を行い、注釈の注釈を作成し、第一回・第二回を連載した。ドイツの原注釈者とも連絡を取って情報を得ることができた。その研究の副産物として、現代ドイツ関連の論考1篇を発表した。 分担者石井は浙江省海寧・江蘇省崑山・蘇州などに出張した際に、個人蔵及び博物館蔵の旧式の崑曲笛の音響を計測した。その結果、東洋音楽史を貫く共通の音階を見出すことができた。成果は外部に投稿すべく準備中である。また従前に引き続き、元曲を留存する曲牌共通メロディーの考証を続けた。これも投稿準備中である。 石井の研究の副産物として、長崎唐人に関連する重要史料を発見した。長崎に入港した唐船には役人と唐通事が乗り込み、船上でキリスト教禁止を宣布する制札を朗々と読み上げることを務めとしていたが、朗詠の声はまるで崑曲のようだと形容されたことが唐通事史料に見える。その制札の原物が大浦天主堂に蔵せられることを発見し、論考若干篇を発表した。また演劇は祭祀を起源とするが、尖閣列島近海で鉦鼓を打ち鳴らした琉球祭祀が漢文史料に記録されている。これを論じて月刊論壇誌に発表したのも本研究の副産物である。
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