研究概要 |
本年度は研究計画の2年目にあたるため、昨年度蓄積した基礎的研究の成果をふまえて、いくつかの具体的な領域へと研究範囲を広げていった。 動詞の時制・叙法の問題に関しては、昨年度にひきつづき、各言語において具体的な形態の具体的な用法をとりあげ、なぜ、どのようにしてモダリティの諸価値が出てくるのかを研究した。とくに、フランス語の半過去、条件法と、諸言語でそれらと関連づけられる時制から、反実仮想の解釈が生まれる過程に着目し、これについても昨年度研究した未来形の事例と同様、分岐的時間による説明が有効であることがわかった。 法的(準)助動詞に関しては、フランス語のdevoir, falloir, pouvoirなどの動詞(および他の言語でそれらに対応する動詞や(準)助動詞)、ならびにそれらと類義の諸表現について、同様にモダリティの価値のあらわれかたを明らかにした。とりわけ、拘束的用法の否定の多義性について詳細に研究し、各解釈が生まれる過程を解明した。 さらに、フランス語と日本語の近似表現approximatifの対照研究もおこない、いずれの言語においても、ある辞項を射程とする近似表現と、発話文全体を射程とする近似表現とがまったく平行的にとらえられることが明らかになった。 平素の活動としては、科学研究費補助金(基盤研究(C))課題番号19520414「日英語ならびに西欧諸語における時制の比較研究」(研究代表者和田尚明)と合同で、筑波大学内で5回にわたって研究会を開催したほか、当研究課題独自では下記の公開講演会を実施し、新たな知見を得るとともに、相互に討論を行なった。 ・髭郁彦(中央大学非常勤講師)「ポリフォニーと対話」2009年12月11日(金)15時~17時 成果発表としては、別欄に示した学会発表を行ない、論文公刊した。
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