研究課題/領域番号 |
20520348
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渡邊 淳也 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20349210)
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キーワード | フランス語 / 日本語 / モダリティ |
研究概要 |
前年度から研究してきたJ.-Cl.Anscombreのステレオタイプ理論については、別欄リストの第1項として示した論文を公表し、その射程と限界を明らかにした。 研究計画当初から対象にしてきたフランス語の半過去とその関連事象については、フランス語の「丁寧の半過去」と日本語の「よろしかったでしょうか」型語法について過去に公刊した論文をふまえて、さらに発展的に考察した内容を国際セミナーで発表した。また、半過去の多くの用法に関係することとして、事態そのものを直接時間軸上に位置づける「叙事的時制」、事態そのものに認められる「叙事的アスペクト」とならんで、その事態を眺望する視点を時間軸上に位置づける「叙想的時制」、事態をどのように眺めているかを示す「叙想的アスペクト」の存在が、時制とモダリティの連関のうえで重要であるという結論にいたった。叙想的レヴェルは、とくにアスペクトに関しては従来一貫した扱いをうけてこなかったが、当研究課題によって明示化できたものである。これについては別欄第3項として示した論文を公刊した。 さらに、文内で多様なレヴェルの状況補語としてモダリティにも関連する現在分詞とジェロンディフについても包括的考察をおこない、論文(別欄第2項)を公刊した。この論文では、しばしばフランス語に独特なものと見なされるジェロンディフについて、ラテン語、スペイン語、イタリア語との実証的対比も示した。 また、日本語の「伝聞」表現とされる「そうだ」については、情報の中継という概念ではとらえきれないことを実例で示し、原発話者の意図に関する解釈と、状況への関与性を示すとする論文(別欄第4項)を公刊した。 平素の活動としては、筑波大学内で5回にわたって研究会を開催したほか、下記の公開講演会を実施し、新たな知見を得るとともに、相互に討論を行なった。 安西記世子(大阪大学非常勤講師)「フランス語の複合過去のモダリティ的側面」2011年6月21日(火)15時~17時
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モダリティの多様な発現に応じて、時制、アスペクト、現在分詞、ジェロンディフ、助動詞、そしてステレオタイプ理論など、広範囲の研究を推進し、フランス語と日本語、そしてフランス語以外のロマンス諸語に関して1年間で合計4本の論文を公刊した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究計画の最終年度であるので、これまで推進してきた各論的な研究の仕上げをしながら、研究成果を意義づけるとともに、全体の総括、理論化をおこなう。ひきつづき論文、口頭発表を積極的におこなうほか、これまで講演会、研究会で発表していただいた方々のご協力も得ながら、本研究課題全般についての報告書を作成し、刊行する予定である。
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