研究計画の最終年度にあたる平成24年度は、各論的な研究の仕上げをしながら、これまで推進してきた研究の成果を総合し、全体の総括をおこなった。 平成23年度にも論文を執筆した叙想的時制と叙想的アスペクトについて、半過去に関する記述を見直しながら日本フランス語学会で発表をおこなった。また、同じ半過去の一用法である「間一髪の半過去」と、それに類似する西日本諸方言における「未完了の「よった」」との対照研究について、当該用法の存在する方言の圏域に属する岡山大学で招待講演をした。 一般的に、とりわけ叙想的アスペクトについては、従来はモダリティとは切り離して論じられてきたテーマであるが、事態に対する話者の視点やとらえ方が濃厚にあらわれており、アスペクトの領域にもモダリティが滲入してきている事例として新たに論ずることとなった。 単純未来形と迂言的未来形に関する研究もおこない、論文を執筆した。とくに従来モダリティ用法に関する研究が手薄であった迂言的未来形について、「異常なふるまい」をあらわす評価的用法を、準助動詞 aller の文法化と関連づけて論じた。 さらに、フランス語の副詞 toujours の非時間的用法などと、日本語の副詞「やはり」を、J.-Cl. Anscombre のステレオタイプ理論に着想を得て考察し、論文を執筆した。 5年間の研究期間中に講演会、研究会などでご協力いただいた5名のかたがたとともに、本研究のひとつのまとめとして、論文集を執筆・刊行した。
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