研究概要 |
平成20年度交付申請書に記載した次の手順に従い研究を実施した.手順と成果は次の通りである. 手順1:形容詞比喩によって喚起される意味についての経験的データの収集 Osgood(1980)によって提案されたAPG (Abstract Performance Grammar)モデルに基づき,形容詞の 意味と修飾される名詞の意味との相互作用による意味変化パターンについて検討した. 心理実験では,APGモデルによる分析に必要な7段階のSD法を用いた調査手法により,比喩主題の意味変化を探り,どのような形容詞比喩についてどのような意味変化が起きるのかを調査した.その結果,五感を表す形容詞によって修飾される形容詞比喩では,否定的な意味が喚起されやすいという傾向があり,特に,色彩を表す形容詞から作られる比喩においてその傾向が強いことが示された.この成果は,平成21年度夏に開催の国際認知科学会で発表することが決まっている. 手順2:現在の比喩理論によって説明できる点と説明できない点の整理 上述した傾向は,共感覚比喩の一方向性仮説など形容詞比喩を対象とした従来の理論では説明できないことについて検討した. さらに,形容詞比喩と名詞比喩の理解時間を測定する実験を行ったところ,形容詞比喩の理解時間が具象名詞を喩辞とする名詞比喩よりも有意に長いことを確認し,その結果を後載する平成2O年度研究発表として日本認知言語学会で発表している.
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