研究概要 |
本研究は実施2年目であり、初年度からの継続研究を中心におこなった。主たる対象としては、第2言語/外国語習得における主調子配置、いわゆる文アクセントの誤配置に関するものである。具体的には、日本人英語学習者のデータを分析し、この誤配置が上級学習者にも強く残る誤りであること、音韻知識と実際の発話においては、非対称性が見られること、そして正しい配置への習得の過程が2パターンに限られていることが判明し、これを3月の英語音声学研究者国際会議(ベオグラード)で、Ueda, Isao and Hiroko Saito (2010), 'On the production and knowledge of tonic misplacement'として発表した。またこの問題に関して、従来の専攻研究では、ほとんどが母語である日本語からの音韻上の干渉であると論じられているが、上記のデータの分析に基づいて、この誤配置は、音韻論と語用論、さらには統語論が複雑に相互関係していることを主張した。この点に関しては、Ueda, Isao and Hiroko Saito (2009) 'The interface between phonology, pragmatics and syntax in nuclear stress misplacement'としてThe Mind-Context Divide Workshop(アイオワ)において口頭発表した。なおこの発表は活字化され、カスカデラ社から2月に出版されている。 さて音韻障害に関しては、昨年度から母音に障害をもつ、日本語においては非常に珍しい機能性構音障害の事例のデータ分析を始めていたが、データの整理と理論的考察が一段落したので、学会で報告することした。2010年6月にノルウェーのオスロで開催される、国際臨床音声学・言語学学会に応募したところ、採択されたので、発表して専門家のご意見を伺い、さらに発展させる予定である。
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