研究課題/領域番号 |
20520353
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上田 功 大阪大学, 言語文化研究科, 教授 (50176583)
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キーワード | 音声学 / 音韻論 / 言語獲得 / 言語障害 / 外国語訛り |
研究概要 |
本研究の目的は、幼児の言訛発達段階で見られる機能性構音障害と、成人の第二言語/外国語習得において観察される、いわゆる外国語託りを比較対照し、その共通点とそれぞれの習得に個別的な特徴を峻別し、共通する類型的特質を分析することによって、人間の音韻獲得の普遍性を浮き彫りにすることであった。 平成23年度には、前者、すなわち幼児の機能性構音障害については、相応の進捗を見た。まず、これまでに理論的考察をおこなってきた、機能性構音障害の音韻論的特徴付けにおいて、特に幼児の入力表示と出力表示の対応について、類型論的考察をまとめ、機能性構音障害の原因は、入力と出力の間に介在する音韻制約に問題があるタイプと、むしろ獲得した入力そのものに問題があるタイプと、さらにこの両方に問題があるタイプの3種に類型化できることを主張し、これを簡潔にまとめたものを、11月の日本英語学会(新潟大学にて開催)で発表した(招待発表)。また本研究の成功にとって重要なファクターのひとつに、どれだけ多くの機能性構音障害児のデータを集められるかがあるが、23年度は3例の幼児の十分なデータを収集することができた。これらのデータ収集にあたっては、共同研究をおこなっている、カナダのブリティッシュコロンビア大学のバーバラ・メイ・バーンハート教授が主催する、通言語的構音障害プロジェクトメンバーが開発した、言語共通のアセスメントテストにより、国際的に標準的な検査により、データを収集できたことが大きな収穫であった。 成人の外国語訛りに関しては、採択当初から続けている、日本人英語学習者の核音調誤配置の予備的考察が終わったので、これをまとめ、日本音声学会の『音声研究』に掲載した。またこれをさらに改稿したものが、イギリスから出版される予定である。特にこのプロソディーに関する現象は、これまで先行研究が少なく、また皮相的なものが多いので、予備的な考察ではあるが、一定の役割を果たすことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幼児の構音障害の考察が、主として分節音レベルの分析が多いのに対して、成人の外国語訛りの考察が、音調核の誤配置というプロソディーのレベルの論考が多く、両者の完全な比較対照に至っていない点を除けば、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は研究の最終年度にあたるので、何らかの形のまとめができるようにしたい。またこれまでの研究経過で、いくつかの問題が派生してきているので、これらを今後の発展的研究にいかしたいと考えている。
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