本研究の目的は、幼児の機能性構音障害と、成人の外国語訛りの音逸脱の共通点を音韻論から分析し、習得可能な音韻体系を見定め、臨床治療や音声教育に活かそうとするものである。まず音韻論で確立された概念である、「入力表示」「出力表示」「音韻制約あるいは規則」から音逸脱を考察したとき、現行の分析は正しい入力表示を先験的に仮定し、それに対して誤った制約/規則が働くことにより、逸脱発音が生ずるという、理論的に問題のある分析法が臨床的に用いられていることが判明した。これに対して入力表示の正誤の有無を考慮に入れることにより、現実的には多様性を示す音逸脱を合理的に説明でき、それに対応できる臨床/教育効果が得られた。
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