研究概要 |
本研究の目的は,諸先行研究が音響分析結果を基に示した日本語イントネーション決定規則が,現実の会話イントネーションにどの程度合致するかを検討することである。本年度は主として東京方言におけるイントネーション決定規則の知覚的有効性を検証するための聴取実験を行い,その結果の分析を行った。結果は以下のとおりである。 1. 文節問の意味的限定関係およびフォーカスについて従来示されていた規則は,知覚的にも有効であることが確認された。 2. 意味的限定関係について:ある文節が先行文節から意味的限定を受けている場合にふさわしいイントネーションと,限定を受けていない場合にふさわしいイントネーションがどのようなものであるかを検討し,一定の条件下ではあるがその境界を確定できた。具体的には,先行文節が1オクターブの高低幅を持つ4モーラ頭高型アクセントの文節である場合,当該文節が5モーラの頭高型であれば1/2オクターブの高低幅が,そして当該文節が4モーラの平板型であれば約1μオクターブの高低幅が限定・非限定の境界となる。この値より大きければ非限定,小さければ限定としてふさわしいイントネーションと感じられる。 3. フォーカスについて:ある文節にフォーカスがある場合に,その文節はどの程度の高低幅を持つのがふわしいかを検討した。当該文節が6モーラ頭高型で先行文節が9半音の高低幅を持つ4モーラ頭高型の場合,意味論的フォーカスであれば,当該文節には8-11半音程度の,対比フォーカスであれば9.5~12.5半音程度の高低幅がふさわしいという結果が得られた。
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