研究概要 |
読み上げ文の音響分析結果から導き出された理論的な日本語イントネーション決定規則,特に「意味的限定を受けるとアクセントが弱化する規則」と「フォーカス後文節のアクセント弱化規則」が,現実の東京方言の会話イントネーションにあてはまるかどうかを検討したところ,概ねあてはまることが確認できた。また,合成音声を用いた聴取実験を行い,限られた環境においてであるが,意味的限定の有無に対応するアクセント弱化・非弱化の知覚的判断境界を知ることができた。合成音声による聴取実験からはさらに,(1)自然と感じられるフォーカス文節の高さは,情報フォーカス(意味論的フォーカス)より対比フォーカスの方が少し高いこと,(2)2文節全体に広いフォーカスがある場合には第2文節のアクセントを弱化させるのが基本であること,(3)アクセント弱化の程度がパラ言語的意味を表すことも明らかになった。このほか,アクセントの実現度の細かい調整がナレーションの「じょうずさ」とも関係していることがわかった。
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