研究概要 |
本研究課題の統語構造の階層性に関する対照言語学的研究は本年度が3年目にあたる。今年度は、理論的考察を前年度に引き続き発展させ、最終年度の目標を達成することを視野に入れた形で研究を進めた。具体的には、まず、言語現象を的確に記述できる理論開発のために、文献の調査などを前年度より継続して行った。実証的な側面と理論的な側面の双方から、既存の統語理論における問題点を解決するために,日本語および英語を中心に基本となるデータの収集と整理を行い、前年度に引き続いて、日本語・英語およびHindi,Marathi,Bengali語の特殊構文(属格主語構文および与格主語構文)の比較対照を行った。この検討から、所有者上昇に関する新たな問題が見つかり、現在、理論的な検討を重ねている。また、Sinhala語の付加詞に関する検討も日本語と比較統語論の視点から始めた。本年度は,この現象の検討を通じて,主語の階層性(主語がどのような構造位置に現れるかについての問題)についての新たな理論的課題を明らかにすることができ、この問題の検討も行っている。本年度は,アメリカとポーランドにも出張し、他の研究者との意見交換および研究発表を持つことができた。また、この研究の成果の一部は、参加した国際学会の会議録に掲載される予定であり,またこの他にも,本研究に関係する論文が学術雑誌にいくつか掲載された。以上のように、本年度も着実な研究の進展と成果が得られ、最終年度の研究成果の報告に同けた準備がかなりの程度に進んできたものと考えている。
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