研究概要 |
本年度の主たる成果は英語のnative speakersの言語獲得をわかりやすく概説した W.0'Grady,How Children Learn Languageの翻訳である(邦題『子どもとことばの出会い-言語獲得入門-』研究社)。本研究の柱を「理論」、「実験による検証」、「実証的データ」としたが、原著は英語のnative speakersにかかわる「実験による検証」と「実証的データ」を豊富に含んでいることで意義を有している。また、副次的に関連論文を読むことで研究の幅を広げることもできた。 もうひとつの柱である、理論面では、関連性理論の創始者のひとり、D.Wilsonを招いて開催されたワークショップ(於神奈川大学)に招待され、'Pragmatic Intrusion into Syntax?'を発表した。これは従来、語用論による意味論への「侵入」はよく言及されているが、日本語の視点からみると、よりradicalな統語論への「侵入」がみられることを指摘したもので、関連性理論の根幹に理論的にかかわるものである。Wilsonからも賛同を受けた。 また、12月20日に行われた日本語用論学会全国大会(松山大学)では、'Issues in Pragmatic Inpairment:Cognitive Pragmatic Approaches'というタイトルでワークショップを企画し、3人の発表者とWilsonをコメンテーターに迎え、司会を務めた。そこでは、認知語用論と自閉症、識字難読症、認知症という病理との関係に焦点を当て、認知語用論の応用可能性を論じた。
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