本研究の柱を「理論」、「実験による検証」、「実証的データ」としたが、本年度の理論的側面の成果としては、2009年10月スペインで開催された手続き的意味にかかわる学会に参加し、D.WilsonやD.Blakemoreをはじめ関連性理論に興味をもつ精鋭の研究者と意見を交換し、本研究の方向性の正しさを確認できたことである。 また、「実験による検証」の側面では、奈良女子大学附属小学校で、メタ表示能力がかかわる言語現象である「あげる/くれる」と「たい/たがっている」について、1年生から6年生までアンケート調査を行い、貴重なデータを得ることができた。この結果の一部は後述する共著書、口頭発表に反映されている。 本研究にかかわる「実証的データ」としては、ペーパーバックに現れたダイクシス、引用現象など、過去において収集したものをデータ化しつつあり、今後の研究に利用可能な形に整いつつある。 また、言語獲得との関連では、L2教育を関連性理論からみた論考を英語教育学大系第8巻『英語研究と英語教育』の1章として執筆し、今年度末出版を目指して現在編集作業中である。さらに、日本における主だった関連性理論研究者を集めて、KRG談話会を2010年3月9日奈良女子大学で開催し、6つの研究発表の場を提供した。その際、上の論考をもとにして、「語用論能力とL2教育-関連性理論からの視点」と題して口頭発表を行った。 実用面への貢献としては、長年編集作業に携わっていた『英語談話表現辞典」(三省堂)を2009年7月に出版した。会話に頻出する表現を語用論的観点から詳しく説明した世界でもはじめての辞典で、好意的な書評を得ている。
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