本研究課題は、北海道方言の自然会話のコーパスを作成し、それを基に北海道方言にしばしば見られる接続詞の文末用法について通言語的な視点からの調査・分析を行うものである。本研究の主たる目的は、1.北海道方言の録音とその書き起こしを通してデータ収集を行い、2.近年自然発話を分析する目的で提案された「会話分析(Conversational Analysis)」の手法を用いて、北海道方言の会話データをコーパスという形で編纂し、3.そのコーパスを基に北海道方言に特有な接続表現の用法を記述・分析し、その談話機能について明らかにすることである。 これらの研究目標に対する20年度の研究実績は以下の通りである。 1.道東方面などへの方言調査や研究補助によるデータ収集によって、道東方言(釧路)、道南方言(寿都)、道央方言(札幌)の自然会話データの収集を行った。 2.北海道方言コーパス聞き起こしのためのガイドラインを作成し、現時点ではそれらのデータのうち約3時間30分の聞き起こしを概ね終了した。 3.文献調査の結果、近年俄かに英語を始めとする西洋の諸言語において、文末の接続詞用法が新たな問題として注目されつつあることが明らかになった。これらの現象には、日本語の視点、特に北海道方言を始めとする日本語諸方言の視点を導入することによって、当該分野へ新たな貢献が可能であると考え、同様の現象が見られる広島方言の調査を合わせて行った。広島方言調査では、県立広島大学において広島方言研究者及び広島方言話者(学生)から当該現象に関する有益な情報を得ることが出来た。さらに、広島県内において広島方言話者に当該現象に関する極めて重要な方言話者としての直感を聞くことが出来た。来年度は、同様の現象が見られるオーストラリア英語、及び日本語大阪方言に関する調査を合わせて行う予定である。
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