本研究課題は、北海道方言の自然会話のコーパスを作成し、それを基に北海道方言にしばしば見られる接続詞の文末用法について通言語的な視点からの調査・分析を行うものである。本研究の主たる目的は、1.北海道方言の録音とその書き起こしを通してデータ収集を行い、2.近年自然発話を分析する目的で提案された「会話分析(Conversational Analysis)」の手法を用いて、北海道方言の会話データをコーパスという形で編纂し、3.そのコーパスを基に北海道方言に特有な接続表現の用法を記述・分析し、その談話機能について明らかにすることである。 これらの研究目標に対する21年度の研究実績は以下の通りである。 1. データ収集については、研究協力者1名と研究補助4名の協力の下、道央方言(札幌、留寿都、夕張)、道東方言(帯広、網走)の自然会話の収集を行った。 2. コーパス編纂に関しては、研究協力者・補助らと共に、上述の道央方言・道東方言の約3時間分の録音と昨年度の道東調査旅行で収集した約1時間分の録音の聞き起こしを行った。昨年度終了分と併せると、現在約7時間30分の方言データベースを概ね作成したことになる。 3. 現在作成中の北海道方言コーパス及び国立国語研究所発行の『全国方言談話データベース:日本のふるさとことば集成』に基づき、接続詞「そして」の北海道方言的特性について、「社会言語科学会第25回大会」(平成22年3月14旧、於慶応大学日吉キャンパス)にて、研究協力者井筒勝信氏と共に口頭発表を行った。また、7月にオーストラリアで行われた「第11回国際語用論学会」(平成21年7月12日~17日、於メルボルン大学)に研究協力者と共に参加し、最新の談話・語用論に関する成果を学ぶと共に、北海道方言の「そして」と類似した文末の接続詞用法が見られるオーストラリア英語に関する文献収集や現地調査を行った。
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