研究課題
本研究はモダリティーとポライトネスを、対人的・対事的な<距離>、すなわち話し手が聞き手と事柄に対してとる構えという観点から捉えようとする。それによって、敬語や呼称が表す対人的モダリティーも、指示詞や終助詞等が表す対事的モダリティーも、ともに相対的な遠近の相の下に収めることができ、異文化対照研究にも資するところが大きいと期待される。H.20年度は、距離的な発話効果をもたらす語彙要素について、先行研究における扱いと問題点を検討するとともに、基本的な意味機能を画定し、意味機能と文脈との関係で決まる相対的な発話効果の関係を探る計画だった。幸い、予定を上回る成果を得ることができ、研究代表者は、敬語とポライトネスに関する論考や、<距離>を軸とした日韓対照ポライトネス研究の一端を公刊することができた。さらには、モダリティー研究とポライトネス研究の接点から広がる可能性を探るべく、滝浦の他、宮地朝子・北村雅則・加藤淳・深津周太・申媛善・張群・木山幸子らによるレクチャーと討論で構成された「科研費補助金によるワークショップ:モダリティーとポライトネスの語用論」を開催することができた(於・麗澤大学東京研究センター、2009.2.28)。高度な専門家を多く含む約80名の参加者を得て、活発かつ非常に有意義な討論の結果、モダリティー形式の変遷や発達の動機づけとしてポライトネスが一定の要因になっていること、また、ポライトネスを決定づける要因の多様性についての探求が必要であること、が明らかとなった。異文化間対照に関しても、特に中国語との対照について一定の成果を得た。中国語のコミュニケーションにおいて、人間関係の親疎(上下)によって大きく異なるコミュニケーションのモードが存在するとの洞察を得て、その一端を、「2009年国際シンポジウム:東アジアの言語・文化の比較」(於・北海道大学大学院文学研究科言語情報学講座、2009.2.15)における招請講演「文化比較におけるポライトネスの観点-日中対照を例に-」で発表した。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
社会言語科学(社会言語科学会) 11(1)
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哲学雑誌(『日本語の哲学』, 哲学会) 123(795)
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文学(岩波書店) 9(6)
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森雄一・西村義樹・山田進・米山三明編『ことばのダイナミズム』くろしお出版
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