研究概要 |
研究期間の最終年度に当たる今年度は、これまで2カ年に渡る研究活動を通じて得られたいくつかの論点について、集中的に研究を行なった。 まず第一に、言語による表現とは命題とモダリティーの合一にあるとの観点から、日本語においてポライトネスの代表的表現手段である敬語のモダリティー性について、理論的な側面からの考察を行なった。この問題は、言語における主観性の表現という一般的な問題と連続しており、ひいては、主観性の表現が相対的に大きな比重を占める日本語文法のあり方を考えることにもつながっていた。 第二に、ポライトネスのコミュニケーションという機能的側面を、表現の媒体となる言語形式の側から改めて検討した。「走れ」「しろ」のような“はだかの命令形”に着目し、その多様な意味機能と核にある基本義との関係を検討した結果、ポライトネスが、同一の言語形式によって表現しうる話し手にとっての表現意図の1つであることが再確認できた。 第三に、近代から現代にかけての日本社会の変容との関わりで、日本語におけるポライトネスの変遷を跡付ける作業に着手した。また、外国語 (特に韓国語) との対照も合わせて考察することで、ポライトネスの観点から日本語コミュニケーションの来し方と行く末を描くことができると考えている。 以上のような研究の成果を、11.研究発表の項に掲げる2本の学術論文と3回の招待講演において発表したほか、下の2回の招待講演においても発表することができた。 滝浦真人「文法をつくるという営み一山田文法とは何だったか?一」 東北大学文学部・文学研究科国語学研究室特別講演, 2010.5.22, 東北大学 滝浦真人「対人関係の距離感を表現する一日韓対照語用論のために一」 韓国外国語大学大学院日語日文学科,2010.6,4, 韓国外国語大学(韓国・ソウル市)
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