研究課題
まず、前年度に開始した日本語左方周縁部の意味的・談話的特徴に関する研究をまとめ、オックスフォード大学出版会から刊行された論文集The Sound Patterns of Syntaxに発表した。この論文は、機能範疇Predが時制の上位に位置して、項素性を有する句を指定部に牽引することを提案し、このことにより、文頭句の否定辞との作用域関係や主題あるいは焦点としての解釈を説明しうることを示したものである。また、Pred指定部への移動とスクランブリングを様々な形で組み合わせることによってこの仮説を検証し、その経験的妥当性を明らかにしている。次に、この成果をふまえて、文左方周縁部に関する日本語とロマンス系言語の比較研究を本格的に開始し、その第一歩として、補文構造の比較研究を詳細に行った。この研究を通して、文左方周縁部の構造が当該言語間で極めて類似していることが明らかになり、言語間の相違を説明するパラメターを提示する展望が開けつつある。この研究については、フランクフルト大学で開催された国際学会で中間報告を行ったが、現在も研究を継続しており、来年度に論文の形にまとめて公刊する予定である。名詞句構造の研究では、韓国・慶北国立大学のDuk-Ho An氏と共同研究を行い、9月に名古屋大学で開催されたThe Sixth Workshop on Altaic Formal Linguisticsにおいてその成果を発表した。(招待研究発表)日韓語の削除現象が多くの共通点を有することを示した上で、名詞句内のN'削除の有無が際立った相違点であることを明らかにし、さらにこの相違を属格挿入規則に係るミクロパラメターによって説明することを提案した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
The Sound Patterns of Syntax(ed.by Nomi Erteschik-Shir and Lisa Rochman, Oxford University Press, Oxford)
ページ: 140-173
Universals and Variation(ed.by Rajat Mohanty and Mythili Menon, EFL University Press, Hyderabad)
ページ: 313-328
Japanese/Korean Linguistics(CSLI Publications, Stanford) 16
ページ: 44-63
https://nzn.jim.nanzan-u.ac.jp/rd/index.php