研究概要 |
(1)今回の調査では、肇源県において、語彙リスト(基本語彙200程度:20人;一般語彙2,000程度;1人)のインタビュー調査とモンゴル語の文法事項(不変化詞を含む文100)のインタビュー調査(20人)を実施した。その結果、基本語彙にも中国語の借用語がかなり含まれ、言語の変容が起きていることがわかった。地域、年齢、職業によってある程度の差がみられた。文法事項において、不変化詞の多くは中国語からの借用語であることもわかった。それに、若年層は母語であるモンゴル語を忘れ、学校で学んだ簡単な語句しかできなくなっていることもある程度明らかになった。 (2)肇源県における一万四千人を超えるモンゴル族に関する資料収集を行った。同時に、家庭、関係行政機関を訪問し、学校のモンゴル語の授業参加も行い、町や村での実際の言語使用状況を考察し、モンゴル族を取り囲む教育的、社会的要因を考察した。その結果、子供の多くはモンゴル語ができなくなり、言語の消失が迅速に進んでいる実態が明らかになってきた。 (3)肇源県のモンゴル族中学校・高校のモンゴル族生徒や言語調査の被調査者を対象とした言語使用や言語意識に関するインタビュー、アンケート調査も行った(120人程度)。肇源県におけるキンゴル族が集中的に居住する三つのモンゴル族郷を中心に、言語現状についての観察や調査を実施した。こちらのモンゴル語の消失状況がドルブットモンゴル族自治県や泰来県よりも迅速に進んでいる実態が浮き彫りになった。 (4)また、肇源県と泰来県に居住する二つの家族を中心に、語彙や文法事項に関するインタビュー調査を行い、被験者兄弟5人のうち、町に移住した者、および親子のうち、子供が町に移住後、その言語も変わってくることがわかった。この研究成果を12月に台湾で開催された国際学会にて口頭発表を行った。
|