研究概要 |
今年度は代名動詞受動用法が表すモダリティについて検討した.フランス語の代名動詞受動用法には「可能」のモダリティを表す英語の中間構文に類似した性格を持つもの(グループA:cette voiture se gare facilementなど)の他に,「規範」のモダリティを表すもの(グループB:le vin blanc se boit fraisなど)があることはしばしば指摘されるところであるが,同じ「規範」を表す構文の中でも,特に束縛的モダリティを強く示すタイプ(グループC:cettevoiture se gare ici dans ce coinなど)が存在することを指摘し,これを他の「規範」を表す構文と区別する必要性を明らかにした. グループBの主語が多くの場合,総称またはtype読みの解釈を受けるのに対して,グループCの主語はtokenの解釈を受けることが多いこと,また両者の表す「規範」は性格の異なるものであることを指摘した.グループBの「規範」が,潜在的動作主がとるべき行為の様態が規定され,話し手および聞き手が潜在的動作主と同一化するところから生じるのに対して,グループCは束縛的規範がより直接的に現れる一種の指示文・命令文であり,解釈が状況に大きく依存する反面,構文的な制約はむしろ少ないと考えられる. 以上の内容は学会で発表すると共に,現在,論文を投稿中である. 今後は,この違いを2つの構文に見られる叙述形式と関連づけて考えていく予定である.
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