本研究は、資料そのものを海外調査によって得るため、初年度は、ラオスでの調査協力要請と資料収集のための海外調査、そしてそれによって得られた資料による国内での研究の遂行、という内容で研究を進めていった。 まず、ラオ語データベースのための資料選定という目的で、ラオスでよく読まれている書籍や雑誌などを調査した。同時に、具体的な資料収集にあたっての協力要請を含めた現地調査にかかわる課題や効率的な進め方などについて、ラオス言語学者と詳細に協議した。 その後、ラオ語で書かれた現代文学の中から数冊を選定し、補助動詞的なものに着眼しながら入力作業、および内容の意味確認を行っていった。言語研究に利用できるようなラオ語の言語コーパス構築は急務であり、現地の協力を得て一つでも多くの資料を慎重にかつ迅速に入力作業を行うことは本研究の遂行のみならず、今後の国内外におけるラオ語の言語研究にとって役立つものであると考える。12月にはラオスに行き、話し言葉であるラオス映画のスクリプトなどを入手する一方で、今後の研究の打ち合わせをラオス側と行った。それと並行して、入力したデータをもとに、補助動詞と考えられる「khun」と「long」に着眼し、主動詞との意味関係を中心に検討した。その結果、主動詞の移動性や可変性という意味素性が高ければ高いほど、「khun」と「long」は単に方向性を付加する意味役割を持ち、逆に移動性や可変性という意味素性が低ければ低いほど、状況や状態そのものの変化を付加する意味役割を持つということが明らかになった。
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