本研究の成果としては、まず「だけ」が主語もしくは目的語に付いた否定文に対して日本語児が大人と同様に別個の解釈を与えることができると言うことが明らかになり、幼児の日本語文法でも「階層的な」構造が形成されていることが示唆された。また、「だけ」が与格目的語に付いた否定文に対して日本語児が「だけ」が否定辞より広い作用域を取る解釈と狭い作用域を取る解釈のどちらも与えることができ、選好効果を示さなかったことからMusolino and Lidz(2006)の同形読み初期値(Isomorphism by Default)説というよりはHulsey et al.(2004)等の問答要件(Question Answer Requirement)説が支持されることを示した。L2日本語に関しては、日本語の主格目的格構文の獲得においてL1の効果が見られることが明らかになった。
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