研究概要 |
ガリマールから刊行されたR.エングラーとS.ブーケの編纂によるECRITS DE LINGUISTIQUE GENERALE (2002年)の本文校訂と注釈の作業を、ジュネーヴ図書館に保存されている自筆草稿のマイクロフィルムを利用しながら、推し進めた。その過程で以下のような課題に新たに直面したが、研究の深化の契機ともなった。まず第一に、ガリマール版におけるサンスクリット語の解読転写に問題点があることが判明し、サンスクリット語の習得にも時間をかなり割いた。その結果ソシュールが、同時代の歴史言語学者によるサンスクリット文法研究をどのように評価するか、という問題が横たわっていた事が判明した。 第二に、ソシュールの独創的な見解、とりわけ共時言語学の提唱が、19世紀の比較・歴史言語学の動向と密接に関係していることが具体的に明らかになってきたことは、大きな成果と言えよう。その一端は、雑誌『言語』(2009年2月号)に発表した「ソシュールにおける共時態と通時態との峻別について」と題する論考に示すことができた。第三にlangage, langue、paroleという基本用語の日本語訳の問題である。langueを果たして「言語」と一般的に訳することが適切であるかどうか、再検討の必要性が浮上してきた。
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