1996年にソシュール自身の手による草稿が発見され、それ以前に発見されていた草稿と共に『一般言語学草稿』(ガリマール、2002年)が刊行された。しかしながらこの版は数多くの判読上の誤りを含み、50頁にのぼる草稿を無視している。本研究の目的は注釈を付した文献学的な校訂版を作成し、ソシュールの沈黙に関わる問題を検討することであった。すなわち、なぜソシュールは理論的体系の試みを放棄したのか、という問題である。本計画は、草稿の解読に伴う困難のために完全には実現できなかったが、草稿が我々に示すのは一般理論の構築の不可能性を表現しているもう一人のソシュールであることが明らかになった。
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