研究概要 |
平成20年度は,ソグド語と古代チュルク語の言語接触の証拠となる文献資料の調査研究を一貫して行った.ベルリンには未発表のソグド語文書が多数保管されており,それらは幸いにしてインターネット上で公開されている.何千点にも及ぶ資料の中からソグド語の断片を選び出し解読するという作業を行った.20年度は主にマニ文字で書かれた資料を見た.マニ教文献の大半は10世紀にさかのぼり,ソグド語と古代チュルク語の接触が最も活発な時期であったから,重要な資料が含まれている可能性が高い.事実,バイリンガルの文献も見つかっており,その位置づけは今後研究していく必要がある.ソグド文字で書かれた資料は昨年度までに一応の研究を終えており,それをもとに,2006年にドイツの研究者が発表したカタログを改善することができた.それを英文の書評として国際誌で発表した.仏教文献に見られるソグド語と古代チュルク語の関係についても論文を発表したが,ドイツ語に翻訳されハンガリーの東洋学関係の雑誌に発表された.マニ教文献についての研究の副産物として,日本にあるマニ教絵画を発見することもできた.この発見は一般の注目を集め,新聞紙上にも発表された.その後,海外のマニ教学者とともにこの絵画についての論文集を編集した.そこに掲載された論文も新聞紙上で報道された.
|