本年度の研究実績の概要: 1. 改訂版テストの作成と妥当性・有効性の検証 (1) 昨年度作成した、フィリピン語母語話者(年少者)のための母語能力測定基準(案に準拠した、(1)語彙力(定義)(2)文法(3)論理力(4)認知力(5)読解力の5項目から構成されるテストのうち(2)の文法については、学校によって学習の進度が異なり未習の項目が含まれていたため、今年度は、その項目を削除し、新たなものを作成するという方針をとった。 (2) 4項目((1)語彙力(2)論理力(3)認知力(4)読解力)からなる3つのレベル(A、B、C)のテストを新たに作成し、本年1月にフィリピンケソン市の私立小学校で実施した。テストA(1年から3年までのレベルの問題混在:平均2年生レベル)は、1年生と2年生、テストB(3年から5年レベルの問題混在:平均4年生レベル)は、3年生と4年生、テストC(5年と6年の問題混在:平均5.5年レベル)は5年生と6年生をそれぞれの対象として行った。 上記の結果、テストAとテストCについては、ほぼいずれの項目においても上の学年の成績が上回り明らかな有意差が見られ、使える目途がたった。一方、テストBにおいては、(1)語彙力と(3)認知力において、下の学年が若干上回るという結果が出てしまった。今後それらの原因を解明し、テストBの内容を再び若干改訂する必要がある。 2. フィリピンにおける日比混血児(JFC)支援団体訪問 テスト開発の参考にするため、フィリピンにおける3つの日比混血児(JFC)支援団体((1) Dawn Philippines(2) Maligaya Houseおよび(3) 新日系人ネットワーク<SNN>)を訪問し、日本人の父親探し・認知・仕送り等の問題、訪日の目途、日本語の学習をめぐる諸問題、母語学習の状況等、新渡日児童・生徒の背景の把握に努めた。
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